「増築」と一言で言っても、その方法や形は一つではありません。敷地の状況や、どのような空間を増やしたいかという目的によって、様々な種類の増築が存在します。自分たちの理想の暮らしを実現するためには、どのような選択肢があるのかを知り、最適な方法を見つけることが重要です。ここでは、代表的な増築の種類と、それによって広がる暮らしのアイデアをご紹介します。最も一般的で、多くの住宅で採用されているのが、1階部分の床面積を水平方向に広げる「差し掛け増築(さしかけぞうちく)」です。庭などの敷地に余裕がある場合に可能な方法で、既存の建物の壁を一部取り払い、そこに新しい部屋を付け足すようなイメージです。例えば、リビングに隣接して増築し、広々とした開放的なLDKを実現したり、子ども部屋や書斎を新たに設けたりするのに適しています。平屋の家や、敷地にゆとりのある場合に、最も検討しやすい方法と言えるでしょう。敷地に余裕がない都市部の住宅などで有効なのが、建物を垂直方向に広げる増築です。具体的には、平屋の建物を二階建てにしたり、既存の二階建ての家の上に、さらに部屋(三階部分)を乗せたりする方法です。床面積を大きく増やすことができますが、建物の構造計算や、既存部分の基礎・柱の補強が大前提となる、専門性の高い工事です。また、母屋とは別に、敷地内に新たな建物を建てる「離れ」の増築も、魅力的な選択肢です。完全に独立した空間となるため、在宅ワーク用のオフィスや、音の出る楽器を演奏する趣味の部屋、あるいはゲストルームとして、母屋の生活に干渉されることなく、プライベートな時間を過ごすことができます。さらに、居住空間そのものではありませんが、暮らしに彩りを与える増築として「サンルーム」や「インナーテラス」の設置も人気です。ガラス張りの空間は、洗濯物干し場として実用的なだけでなく、観葉植物を育てる温室や、お茶を楽しむカフェスペースとしても活用でき、内と外を緩やかに繋ぐ心地よい中間領域となります。これらの増築によって、あなたの暮らしはどのように変わるでしょうか。増えるのは、単なる部屋の数だけではありません。それは、家族の新しい時間であり、未来の可能性そのものなのです。
知っておきたい増築の種類とアイデア