「庭に余裕があるから、ここに子ども部屋を増築しよう」。そんな風に、自由に住まいを広げられると考えがちですが、実は、増築は誰もが好き勝手に行えるわけではありません。そこには、「建築基準法」をはじめとする、法律という名の、越えなければならない大きな壁が存在します。この法律のルールを無視して増築を行ってしまうと、後から大変な問題に発展する可能性があるため、計画の初期段階で必ず確認しておく必要があります。増築を計画する上で、まず理解しておかなければならないのが、「建ぺい率」と「容積率」という二つの重要な規制です。建ぺい率とは、「敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合」のことです。例えば、建ぺい率が50%と定められた100㎡の土地では、建物を建てられる面積は50㎡まで、ということになります。増築によって、この定められた建ぺい率を超えてしまうことは、法律で固く禁じられています。容積率は、「敷地面積に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合」です。平屋を二階建てにするような、上に広げる増築の場合に、特に重要となる規制です。これらの率は、土地の「用途地域」によって細かく定められており、自分の土地がどのような規制を受けているかを、まずは市役所などで確認する必要があります。さらに、10㎡(約6畳)を超える増築を行う場合や、防火地域・準防火地域に指定されている場所で増築を行う場合には、原則として、工事を始める前に、その計画が法律に適合しているかどうかを役所に審査してもらう「建築確認申請」という手続きが必要になります。この申請には、専門的な知識と図面の作成が不可欠なため、建築士などの専門家に依頼するのが一般的です。もし、これらの法律や手続きを無視して、無許可で増築を行ってしまった場合、それは「違法建築」となります。行政から是正命令が出され、最悪の場合、増築部分の撤去を求められることもあります。また、将来、その家を売却しようとした際に、違法建築であることが発覚し、買い手が見つからなかったり、住宅ローンの審査に通らなかったりといった、深刻なトラブルの原因にもなります。素人判断は絶対に禁物です。増築を思い立ったら、まずはリフォーム会社や建築士といったプロに相談し、法的なチェックをしてもらうことが、安心して計画を進めるための第一歩です。