リフォームを考える時、私たちはどうしても今の暮らしの快適さや、デザインの美しさに目を向けがちです。しかし、50代からのリフォームは、それに加えて、「10年後、20年後の将来の自分」を見据えた視点を持つことが、非常に重要になります。特に、毎日使うお風呂は、加齢に伴う身体能力の変化によって、家の中で最も事故が起こりやすい危険な場所になり得るのです。未来の安心と安全のために、今から考えておくべき「ヒートショック対策」と「バリアフリー」のお風呂リフォームについてご紹介します。まず、冬場の入浴時に最も警戒すべきなのが「ヒートショック」です。これは、暖かいリビングから寒い脱衣所、そして熱いお湯へ、といった急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす現象です。これを防ぐためには、浴室と脱衣所の温度差をなくすことが何よりも重要です。リフォームで「浴室暖房乾燥機」を設置すれば、入浴前に浴室を暖めておくことができます。また、窓を断熱性の高いペアガラスに交換したり、ユニットバス自体を保温性の高いものにしたりすることも効果的です。次に、「バリアフリー」の視点です。今は何ともなくても、将来、足腰が弱くなった時のことを想像してみましょう。浴槽をまたぐ動作は、転倒の大きなリスクになります。浴槽の高さを低く抑えた「またぎやすい浴槽」を選ぶことは、安全な入浴の第一歩です。また、浴室内での立ち座りや移動を助ける「手すり」の設置は、必須の項目です。壁のどの位置にでも後から手すりを付けられるように、下地補強をしておくと良いでしょう。床材は、濡れても滑りにくい素材を選ぶことが大切です。ドアも、開き戸よりは、開閉スペースが少なく、万が一中で人が倒れても開けやすい「引き戸」が理想的です。これらの対策は、介護が必要になってから行うと、心身共に大きな負担となります。まだ体力にも判断力にも余裕がある50代のうちに、将来を見据えたリフォームを行っておくこと。それは、将来の自分と家族への、最高のプレゼントになるはずです。