増築リフォームを計画する際、多くの人は、新しく生まれる部屋のデザインや間取り、内装の仕上げといった、目に見える部分に心を奪われがちです。しかし、増築の成否を分ける上で、実は最も重要で、絶対に軽視してはならないのが、目には見えない「構造」の問題、特に「耐震性」です。この構造的な問題を疎かにすると、せっかく広くなった我が家が、地震などの災害時に、かえって危険な場所になってしまう可能性があります。増築において、構造上、最も難しく、そして最も注意が必要なのが、既存の建物と新しく増築する部分との「接合部」です。性質の異なる二つの建物を繋ぎ合わせるこの部分は、地震が発生した際に、それぞれが異なる揺れ方をしようとするため、非常に大きな力が集中します。この接合部の設計と施工が不適切だと、地震のエネルギーによって接合部が破壊されたり、建物全体に歪みが生じたりする危険性があります。また、この接合部は、雨仕舞(あまじまい)が非常に難しく、雨漏りの最大の原因となりやすい箇所でもあります。次に、考慮しなければならないのが、家全体の「耐震バランス」です。建築基準法は年々厳しくなっており、古い既存の建物と、最新の基準で建てられる増築部分とでは、耐震性能に大きな差があります。もし、増築部分だけを非常に頑丈に作ってしまうと、地震の際には、相対的に弱い既存部分の方に、揺れのエネルギーが集中してしまい、そこから倒壊に至る危険性すら指摘されています。理想的なのは、増築を機に、家全体の耐震診断を行い、必要であれば、既存部分にも筋交いを追加したり、金物で補強したりといった「耐震補強工事」を同時に行うことです。これにより、家全体の耐震バランスが整い、より安全な住まいを実現することができます。また、建物を支える「基礎」についても、注意が必要です。新しい基礎と古い基礎を一体化させるのは難しく、施工が不十分だと、地盤の状況によっては、年月を経て建物が不均一に沈下する「不同沈下」を引き起こすリスクもあります。これらの構造に関する問題は、高度な専門知識を要するため、一般の人が判断することは不可能です。増築を検討する際には、必ず、構造計算ができる建築士や、増築工事の実績が豊富な、信頼できる専門家に相談することが、家族の安全と財産を守るための絶対条件となるのです。