不動産管理の実務を長年行っていると、退去時のクッションフロアの扱いは非常にデリケートな問題だと痛感します。大家や管理会社の立場からすれば、次の入居者に気持ちよく住んでもらうためには、少しでも汚れや傷があれば張り替えたいというのが本音です。しかし、現代の法制度下では、入居者にその費用をすべて転嫁することはほぼ不可能です。私たちが張替えを決定する基準は、清掃で落ちない汚れがあるかどうか、そしてその原因が何かという点に集約されます。例えば、窓を開けっ放しにして雨が降り込み、それが原因でクッションフロアが腐食してしまった場合などは、明らかに入居者の不注意ですので、費用の負担をお願いすることになります。一方で、最近の入居者様は非常に勉強されており、立会い時にガイドラインをプリントアウトして持参されることも珍しくありません。管理会社としても、無理な請求をしてSNSなどで悪評を立てられるリスクは避けたいと考えています。そのため、明らかな過失がない限り、最近では多くの会社が当初から減価償却を考慮した見積もりを作成するようになっています。ただ、一つだけ注意していただきたいのは、ペットの飼育に伴う汚れやニオイです。ペット可物件であっても、粗相によるシミや独特のニオイが染み付いてしまったクッションフロアは、清掃ではどうにもならないため、ほぼ確実に張替え対象となります。この場合、通常の経年劣化とは別の基準で判断されることもあり、全額負担を求められる可能性が高まります。また、DIYが流行していますが、入居者様が自分で剥がせるタイプのシートをクッションフロアの上に貼った結果、剥がす際に元の床材まで傷めてしまうという事例が多発しています。これは良かれと思っての行動でも、全額負担の対象になりかねませんので注意が必要です。私たちプロが最も重視するのは、入居中の対話です。何かあったときに早めに相談してくれている入居者様に対しては、退去時も柔軟な対応をしやすいものです。